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あすなろ134 イモ(過去記事)

2018年4月19日投稿

 

 

 

2012.12号
 
 

こんにちは。
 
ジャガイモ派です。
 
 
 
世の中の人は、
イモが好きといえばサツマイモのことを考える場合が多いようですが、
私の中ではジャガイモが圧倒的勝利です。
 
どうもすみません。
 
 
 
サツマイモも、そんな嫌いってわけじゃないのですが、
特に喜んで食べるという程は好きではありません。
 
焼き芋屋さんががんばっていても、ふーん、てな感じです。
 
しかし、スーパーに行って新ジャガを見ると、
おしりがそわそわしてくるような、そんな私です。
 
 
 
日本で普通イモといえば、
あとはサトイモとヤマイモといったところでしょうか。
 
その4つの写真を、ちょっと並べてみます。
 
 
 

 
 
 
いやー、ぜんっぜん違いますよね。
 
 
 
植物学的には、
ジャガイモはナス目ナス科の植物ですが、
サツマイモは同じナス目でもヒルガオ科で、
サトイモはサトイモ目サトイモ科、
ヤマイモはユリ目ヤマノイモ科、となっています。
 
また、ジャガイモとサツマイモは双子葉植物で、
サトイモとヤマイモは単子葉植物です。
 
このあたりを習った人ならわかるとは思いますが、
そりゃ全然違うわけです。
 
 
 
そもそも、
「イモ」って何なのでしょう。
 
 
 
いつも頼りにしているwikipediaでは、
 
 
 


 
芋(いも)とは、
植物の根や地下茎といった地下部が
肥大化して養分を蓄えた器官である。
 
特にその中で
食用を中心に人間生活の資源として
利用されるものを指すことが多い。
 
但し、通常は
タマネギのような鱗茎は含めない。
 


 
 
 
……となっていました。
 
 
 
ふーん。
 
じゃあ大根はイモ?
 
ショウガは?
 
 
 
紙の辞書も見てみましょうか。
 
 
 


 
●ベネッセ チャレンジ国語辞典
 
 
 
植物の地下茎や根に養分がためられて大きくなったもの。
 
ジャガイモ・サトイモ・サツマイモなど。
 


 
 
 
うん。
 
これじゃ大根もイモですね。
 
 
 


 
●明治書院 精選国語辞典
 
 
 
【芋】形成文字。
 
意味を表す艸に、音を表す于を加えて、大きい葉の付く芋類の意を示す。
 


 
 
 
アホかお前。
 
「芋ってなあに?」
 
「芋のこと」
 
って会話になってないだろそれ。
 
 
 
じゃあ大野さんの角川は?
 
 
 


 
●角川書店 必携国語辞典
 
 
 
植物の根や地下茎が発達したもの。
 
ジャガイモ・サツマイモなど。
 


 
 
 
だめですね。
 
まだ大根もショウガもイモだ。
 
 
 
北原さんの明鏡。
 
 
 


 
●大修館書店 明鏡国語辞典
 
 
 
植物の根や地下茎が大きくなって、でんぷんなどを蓄えたものの総称。
 
サツマイモ・ジャガイモ・サトイモ・ヤマノイモなど。
 


 
 
 
ほほう。
 
でんぷんの表記が新しいですね。
 
さすが筑波大の元学長。
 
 
 
確かに調べてみると、
人参や大根では、
でんぷんよりも糖類の方が多く含まれています。
 
一方、ヤマイモやサトイモには
でんぷんというイメージが無かったのですが、
実はでんぷんが主成分のようです。
 
このあたりが結論でしょうか。
 
 
 
面白くなってきたので、ついでに大辞泉。
 
 
 


 
●小学館 大辞泉
 
 
 
植物の根や地下茎が肥大して、
でんぷんなどの養分を蓄えているものの総称。(後略)
 


 
 
 
残念。
 
明鏡そっくしでした。
 
 
 
最後に重鎮広辞苑。
 
 
 


 
●岩波書店 広辞苑
 
 
 
①サトイモ・ツクネイモ・ヤマノイモ・ジャガイモ・サツマイモ
などの総称。
 
(②は略)
 


 
 
 
そう来たか。
 
ある意味、一番正確ですね。
 
新明解が手許に無いので、優勝決定です。
 
 
 
とまあ、
ちょっと長くなってしまいましたが、
要するに肥大した根っこは、
みんなイモと呼んで差し支えないようです。
 
これだけ書いておいてアレですが、
個人的には、
ショウガや葛根も広義のイモだと思っています。
 
特に葛は、主成分がでんぷんですし。
 
 
 
ちなみに英語には、
日本語のイモにあたるような総称が無いようです。
 
根菜 root vegetable という言葉はあるのですが。
 
 
 
そんなイモですが、
最初に挙げた四つのうち、
ヤマイモは日本に古来よりありました。
 
生物学的にも、日本原産の品種です。
 
芥川龍之介の有名な短編
『芋粥』の芋粥も、
ヤマイモとアマヅラという甘味料で煮た粥でした。
 
 
 
サトイモはマレー原産らしいですが、
日本に伝わってきたのは縄文時代ごろだということですから、
こちらも歴史が長いですよね。
 
各地で実施される「芋煮会」の芋もサトイモです。
 
また、世界各地で主食にされているタロイモは、
サトイモと同じ仲間です。
 
 
 
この二つは、
ヤマ(山)とサト(里)と対になっているところからも、
日本ではこれが本来のイモなのでしょう。
 
 
 
一方、サツマイモは、
江戸時代に儒学者の青木昆陽が、
甘蔗という名で広めたことで有名ですね。
 
享保の大飢饉で懲りた徳川吉宗が、
飢饉対策に大岡忠相(大岡越前)を通じて
青木昆陽に命じたのだということです。
 
その後も大飢饉は何度か起こっていますが、
サツマイモの普及率の高かった西日本では、
東北よりも被害が少なく済んでいるようです。
 
 
 
サツマイモは最初、
 
「味が栗(九里)に近いから『八里半』」
 
だとか、
 
「『栗(九里)より(四里)うまい十三里(9+4=13)』という呼び名で広めた」
 
と子供の頃に読みました。
 
 
 
しかし江戸時代の頃のサツマイモは、
今に比べて小さくて甘味も少なかったようです。
 
今のようなサツマイモが作られるようになったのは
明治以降のことで、
十三里の呼称も明治の話なのだそうです。
 
 
 
そして、我が愛するジャガイモは、
南米原産です。
 
16世紀に、スペイン人によって
ヨーロッパに伝わったのが最初でした。
 
ということは、
ドイツやイギリスのジャガイモ料理は、
安土桃山時代以降ということになります。
 
 
 
日本にも、
江戸時代初期に伝わってきていますが、
普及したのはサツマイモより遅く、
江戸末期だったようです。
 
これには、若いイモや芽に毒が含まれることと、
連作障害が起きやすいことも要因としてあったようです。
 
 
 
あと、ジャガイモの名は、
ジャワのジャガタラ(現ジャカルタ)に由来します。
 
これは小学生の頃、
国語の教科書で知りました。
 
 
 
国語辞典の迷走っぷりは、
こんなネタにもしています。
 
 
 
学塾ヴィッセンブルク 朝倉智義